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数字のはなし

役員報酬は価値観の鏡

役員報酬をいくらにするか、そこには代表者の意志や価値観がみてとれます。

特に家族経営体である法人の決算書に表れる役員報酬額、特に妻や子供ら、内縁の妻?愛人?と思える人にまで役員にして報酬を払っているかもしれないことが調査選定理由になりえます。

そもそも「会社は自分のものだから、誰に報酬を払おうが自由だ」という考えは、報酬を通じて資産を移転しているだけであり、「役員だけ特別」の考えは、社員の不満や業績悪化に繋がりかねません。

そして、高額な報酬を支払う理由が明確であり、経済合理性がない場合、税務調査において認められないと判断される場合があります。

今回紹介するのは、医療法人と有限会社が支払った役員報酬と退職金が架空計上であるとされた事例です。

絵にかいたようなワンマン経営者の主張は次のとおり

・原告法人ら規模の家族経営体では、誰を役員に選任するか、当該役員にどのような職務を担当させ、報酬をどの程度とするかは、各経営体が独立して判断し得る事項であり、支払が明確でその支払に対する定められた税負担をしている限り、国家が介入すべき事項ではない

・法人税法34条1項の「不相当に高額な部分の金額」が不確定概念であり、かつ同法施行令70条をもってしても、その内容が明確であるとはいえないから、同規定は、課税要件明確主義の原則に照らし、憲法、租税法律主義に違反する

もちろん、役員の功績や会社への貢献の度合いを客観的に評価することは困難であり、調査担当者や裁判官が役員報酬額を決めることはできません。

しかし、職務の対価に当たらない計上額を法人税法上報酬として評価することはできないことは、公平性の問題からも認められません。

職務の内容に照らして不相当に高額な役員報酬を払う理由は何か?

職務とは無関係の生活費として支給されているのではないか、本人へ支給されていないのではないかと疑われる場合は、徹底した調査が行われることになります。

①経営に参画していたか?金額に見合う職務内容であるかを確認

 補助的な事務を不定期に行うに過ぎず、相談に乗るくらいでは、管理者としての職務を行っていたとはいえない

②報酬の支払い

 本人へ支給されていない、生活費相当額であった

③口座は誰が管理しているか

口座の存在や振り込まれていた報酬の存在を知っているからといって、口座名義人に帰属することにはならない

なお、この事例では、医療法人理事長は丙に対する 退職金を自己が管理する丙名義口座に振り込んだ後、ほどなく自己が管理する借名口座へ移動させており、関与税理士から退職金を受領するよう申し出があるまで、同退職金支給の事実を知りませんでした。

そして、退職金を丙に支払わず、これを支払うつもりもないのに、退職 金を支払ったかのような経理処理及び預金の操作をしたが、税務調査を受けたことから辻褄合わせのため、丙に対して退職金に相当する金銭を支払ったものと認められるとし、架空の退職給与だと判断されました。

調査では、現場確認や聴き取り等で職務内容や貢献度の有無、支払いの事実、法人の経費として経済的合理性があるか、事実を確認していくことになります。

例えば、この事例では、

・インターネットバンキング サービスを利用するために必要なパソコンを自宅に持たず、その操作の方法も知らない上、インター ネットバンキングの内容を理解しているのかさえも疑わしい

・タイムカードを偽装して提出している事実

などの事実を積み重ねていくことで、脱税を暴くことになります。

家族を役員にすることで経営の安定を図り、家族に給与として利益を分配することで節税になります。

それが、私物化の気持ちが強いと脱税と判断される場合があります。

数字に表れるお金の価値観。

脱税は法律によって裁かれます。

参考

平成19年12月19日さいたま地裁判決(税務訴訟資料 第257‐240(順号10849)

平成20年10月1日東京高裁判決第258号-184(順号11042)

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