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ブラックボックス化の原因

税務調査はブラックボックス 信義則の要件

調査担当職員から行政指導にとどめると発言がされた後、更正処分されたことに対して争われた事例(平成26年7月18日東京地裁判決 税務訴訟資料 第264号-129(順号12510))があります。

その他にも

納税者が青色申告の承認を受けていないにもかかわらず、誤って青色申告をし、税務署が誤りをみすごしてそれを受理し、その後、青色申告用紙を納税者に送付していただけでは、納税者の申告を青色申告だと認め、青色申告を承認したことにはならない

表示の誤りが容易に認識できる、納税者が表示の誤りに気付いている場合など、誤った表示を信じその表示に従って申告をする、申告をしないという行為は含まれない

過去の税務調査の結果が、将来にわたり課税庁に更正等の処分を行わせないことを約するものではない

など、信義則の適用を認める判決は少ないです。

信義則ないし禁反言の法理とは、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」(民法第1条第2項)に基づいたもので、

・人は相手方の合理的な期待や信頼を裏切ってはならない

・人はいったんなした言動をそれが誤りであったことを理由としてひるがえすことができない

とし、これらはもちろん税法、税務行政にも適用されるべきです。

では、「信義則ないし禁反言の法理の適用を肯定すべき事由がある」とはどういうことでしょうか。

それは「租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存すると認めるに足りる証拠ないし事情ある場合」で、次の全てが満たされる場合です。

① 課税庁による公的見解の表示があること。

② 納税者がその表示を信頼し、行動したことに、納税者の責めに帰すべき事由がないこと。

③ その表示に反する課税処分によって、納税者が経済的不利益を受けること。

これら全てに当てはまるかを検討するにあたり、調査担当職員の発言は、公的見解か?という疑問が生じます。

裁判官は、「信頼の対象となる公的見解の表示であるというためには、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であることを要するというべきである。」とし、調査担当職員の発言は公的見解の表示には当たらず、税務官庁の一担当者としての見解ないし処理方針を示したものにすぎないと判断しています。

ちなみに、「その他の責任ある立場にある者」は税務署の場合、統括調査官以上の者を指すとされます。

そして、指導にすると発言されたことは、過少申告加算税を免除すべき正当な理由にならないと判断されています。

さらに、国賠法1条1項に基づく請求も認められませんでした。

たらればを言い出したらきりがありません。感情を吐き出すこともしませんが、こういう裁判もあることを知ってもらいたいと思います。

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