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判例から学ぶ租税心理学(第2回)      

            一時所得と判断された競艇・競馬・競輪の払戻金等

決算書の数字は人の価値観の集合体です。

納税者は「これでよい」と思って申告をします

税務署は事実を確認し、誤りを正します。

裁判所は法律と証拠に基づいて判断します。

判例を読むと、納税者の価値観がどのように主張として表れ、なぜ認められなかったのかがわかります。

判例は納税者の心理に沿って租税法を学ぶことができる、最良のテキストです。

本稿では、競艇・競馬・競輪の払戻金及びキャッシュバックが雑所得か一時所得かで争われた判例(令和3年6月23日広島地裁判決)を取り上げ、租税心理の観点から解説します。

【事案の概要】

原告は、競艇・競馬・競輪等の払戻金及びキャッシュバックを得ていたが所得税の確定申告をしなかった。

課税庁は、一時所得に該当するとしては決定処分及びび無申告加算税の賦課決定処分をした。

原告は、雑所得に該当する、確定申告を行わなかったことには正当な理由があると主張し取消しを求めた。

なお、訴訟後、オート車券の的中によって得た払戻金に係る所得は雑所得に該当するとして減額する各更正処分及び無申告加算税を減額する各賦課決定処分をした。

≪事実≫

1 購入していた車券等

・小型自動車競走(オートレース)の勝車投票券

・モーターボート競走(競艇)の勝舟投票券

・競馬の勝馬投票券

・自転車競走(競輪)

2 公営競技の利用状況

・オートレース、競艇、競馬、競輪について、「年間購入金額」、「年間払戻金額」及び「差引金額」の記載がある一覧表を作成している

・インターネットを利用して購入している

   年       キャッシュバックの額
平成22年                93万6414円
平成23年                59万3000円
平成24年                175万0500円
平成25年                265万9864円
平成26年                77万4745円

                  

【課税庁が把握した事実】

〈競艇〉

平成25年において1358回(舟券を購入したレース数に占める割合約 2.5%)

平成26年において 728回(舟券を購入したレース数に占める割合約1.4%)

舟券の年間購入金額 1年当たり合計約179万5000円から約2253万8200円

5年間で一度も収支上利益が発生していない

〈競馬〉

    年    中央競馬回数と購入金額   地方競馬回数と購入金額
平成22年 不明     1373回1年当たり合計
約172万6900円~
約976万4600円
平成23年      55日 1584万5015円      618回
平成24年      83日 2673万6165円 240回
平成25年      92日 1922万3060円 120回
平成26年      84日 1779万0030円  106回

※全レース数は地方競馬がオートレースを大幅に上回るにもかかわらず、 地方競馬の馬券の年間購入額が車検の年間購入額を大幅に下回る

〈競輪〉

平成25年において31万1200円、平成26年において8万6000円と少額にとどまり、購入レース数及び購入頻度はいずれも少ない

【納税者(原告)の主張】

・車券等の購入行為は、公営競技全体を通じて一つの経済活動というべきものであるから、これらを一体のものとして非継続性要件の有無を判断すべきである

・車券等の購入行為は、長期間にわたって多数回かつ高頻度で行われたものであり、利益発生の規模や期間等の観点からしても、客観的にみて営利的な行為である

年度 購入金額 所得
平成22年 約1億5780万円 約4910万円
平成23年 約1億5950万円 約3760万円
平成24年 約1億6880万円 約150万円
平成25年 約2億7400万円 約300万円
平成26年 約3億1960万円 約1360万円

・車券等の払戻金につい ては、非課税とされている宝くじやTOTOと同様、購入時に実質的には税負担がされているとして、納税義務はないものと理解していた

【裁判所の判断】

・払戻金所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるか否か(非継続性要件)は、公営競技ごとに個別に判断するのが相当である

 購入の態様が、一般のいわゆる常連による購入の態様と質的に異なるものではないこと、公営競技ごとの購入行為は、営利を目的とする継続的行為であるとはいえないことから一時所得に該当するというべきである

・キャッシュバック所得は、原告が、車券等を購入する際、公営競技施行者等又は利用先の銀行の抽選に当選したこと等によって取得したものであることに照らせば、偶発的かつ恩恵的に生じた所得というべきであり、これによって多額の利益が長期間にわたって発生したとも認められないから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるとはいえず、一時所得に該当する

【一言】

最高裁平成29年12月15日判決は、本件の競馬の馬券の払戻金については、馬券購入の態様や利益発生の状況等から雑所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当すると判断したことを受け、所得税基本通達34-1も改正されました。

競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等が、この最高裁判決の事案と同じように営利を目的とする継続的行為と判断されるには、事実と証拠の積み重ねが必要です。

また、正当な理由を争う裁判は多くありますが、単なる法の不知又は誤解は、確定申告書を法定の申告期限内に提出しない「正当な理由」にはなりません。

災害、交通・通信の途絶以外に、期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるときはに「正当な理由」該当しますが、『真にやむを得ない事由』には心情が表れる場合があります。

  1. 判例から学ぶ租税心理学(第2回)      

  2. 判例から学ぶ租税心理学(第1回)

  3. 役員報酬は価値観の鏡

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