架空の売上高を原資として支払われた報酬に係る源泉所得税の還付を求めた事例(令和3年4月27日東京地裁判決(税務訴訟資料 第271号‐55(順号13557))を紹介します。
関係会社から原告に対して外注費ではないのに、外注費という名目でお金が流れ、原告は売上じゃないのに売上として計上していたことに対して是正されました。
報酬を支払った事実に対して源泉所得税等の納税義務が成立しているので、たとえ報酬が返還されたとしても、還付されることはありません。
「売上高が否認された以上、本件各報酬も支払う必要はなかった」
「社員総会において本件各報酬の返納が可決されたので、本件各報酬に係る源泉所得税等の納付義務はない」
これらの原告の主張に対して裁判所は次のように判断しています。
「各社員に対し、各報酬として現に支払ったものであって、これが給与等に該当することは明らかであるから、源泉所得税等の納税義務が成立しており、その納付すべき税額も確定していたというべきである」
「報酬を原告に自主返納する旨の意思表示をしたとしても、いったん確定した本件各報酬に係る源泉所得税等の納付義務に対しては何ら影響を及ぼすものではない」
裁判は、法律の要件に照らして事実と証拠から、適正に課税されているかどうか判断します。
原告と関係会社との力関係や不正加担した理由はわかりません。
そもそも報酬を払うことにした理由は?
節税対策?
それとも関係会社にバックする必要があったから?
誰が利益を得たの?
色々な人の感情が取引を生み出し数字は作られます。
報酬に対して個人が税負担をしていれば、個人が取得したお金をどう使うかは個人の自由で、その使途は調査の対象にはなりません。
その後のお金の行方はわかりません。
適正課税とは、真に利益を得た人に課税されるべき
税務処理における透明性や適正性の重要性を語るのは難しいと感じる事例でした。