税務調査の選定はAIがしているそうです。もちろん、AIが選定した中から優先順位をつけるのは人です。
マイナンバーとインボイスにより、全ての取引が紐づけられるようになるのかわかりませんが、税務調査のやり方が変わっていったとしても、人がするべきところは残ります。
AIがどんなに進化しても、AIができないことが存在するのであれば、そこは人が存在する意味があり、税務調査においての税理士の必要性を感じます。
例えば
・事実を認定し、その事実から法律にあてはめる
・感情に基づく主張(気持ち)の代弁
・商慣習、価値観、経験や文化的背景を通じた判断
・目線の先を追う、空気を読むなど言語化されていない微妙なニュアンス
・臨機応変な対応
私が税務調査担当者だった頃は感覚を大事にしていました。なんとなく違和感がある数字、なんとなく気になる数字、これらの帳簿にのっている数字は、どんな事情で、どんな感情から、どの書類を通して記載されたのか、それはそれは色々なことを想像しながら調査していました。
税務調査担当者は数字のもととなる証拠を探し、その証拠から事実を認定します。そしてその事実を前提に法律に当てはめ、是か否かを判断します。もし前提となる事実が間違っていたら、もちろん、誤った結論になります。
納税者は、法律は知らなくても、事実を知っています。間違えた事実認定により課税されると、不満が爆発するのは当たり前です。
調査担当者が誤った事実認定に対し、税理士は、納税者の主張が正しいことを証明し、代弁するべきです。
その例として、宴会費用が高額であることだけをもって、「通常要する費用」を超えると認定することはできないことを判断した事例(平成29年4月25日福岡地裁判決(税務訴訟資料 第267号-66(順号13015))を紹介します。
この判例をみた時に、証拠からいかに納税者の主張汲み取った事実認定をするかが大切かを学びました。
数字には、沢山の事情が含まれています。
数字のもととなる証拠を調査担当者がどう事実認定したのか、それは納税者の事実と同じなのか
証拠から事実の認定し、納税者の主張が正しいことを証明し、代弁することはAIにはできません。それができる税理士が必要なのです。