税務調査で調査担当者からの質問に応える形で作成される書類があります。それが「質問応答記録書」です。
そもそも質問応答記録書とは何?
なぜ、それを作成する必要があるの?
なぜ、写しをもらえないの?などの疑問をもったまま、知らないままに質問に応え、署名していませんか?
税務調査において、課税要件事実を課税庁が立証できなければ、課税できません。
なので、直接的な証拠がない場合に、証拠としてこの質問応答記録書を作成することになり、これを根拠に7年遡及し課税され、重加算税が賦課される場合があります。
つまり、質問応答記録書に署名があれば、その書かれた内容の事実を認めたとして、それをもとに課税されるわけですが、署名がなくても、回答者が署名を拒否した旨を記載し、証拠として取り扱われます。
もちろん、訂正するように求めれば、訂正されます。
ただし、ゆっくり時間をかけて読み直しをしたくても、調査担当者が作成した書類は行政文書なので、写しはもらえないし、訂正を求めるタイミングがつかめない場合もあるようです。
なにかモヤっとしたまま調査が終わり、後になって不満が噴き出す場合があります。
その結果、裁判で「質問応答記録書は、事情聴取とは無関係に事前に作成されたものにすぎず、質問応答記録書は、手書きで作成されたものであるものの、当該記録書が作成された日は、事情聴取に費やす時間がなかったから、本件調査担当者が、事情聴取とは関係なく事前に作成したものであるか、原告との会話もなく一方的に作成したものであるかのいずれかであるとして、本件各質問応答記録書は、真実のやり取りが記録されているものとはいえない」と主張することになります。
しかしながら、裁判所は原告の主張を認めることはありません。
「調査の担当者は、質問応答記録書の原案を回答者に読み聞かせながら、当該原案を閲読させ、内容について回答者から訂正の申立てがあった場合にはその趣旨に沿って訂正し、回答者から間違いがない旨の確認を得て、当該質問応答記録書に回答者の署名及び押印を得るという手順で、質問応答記録書を完成させるものであることから、本件各質問応答記録書の原案が事前に作成されたものであることを前提としたとしても、そのことから直ちに、本件各質問応答記録書の内容の真実性に疑いを差し挟む余地が生ずるものとは認められない。」
つまり、質問応答記録書には、調査担当者が課税するために必要な「過少に申告している」ことを認め、仮装隠蔽の事実まで認める内容が書かれている証拠であり、後で、それが真実でないと主張しても、その証拠がなかったことにはならないのです。
納税者に不利な証拠になるため、質問応答記録書の作成に応じない税理士もいます。
税務調査は、色々な証拠を積み重ねて事実を認定していきます。
質問応答記録書だけで、事実を認定することはありませんが、代表者が認めた内容であることを前提に、課税する方向に進んでいきます。
税務調査がブラックボックスだと言うのは、なんのために、質問応答記録書を作成するのかを明らかにされないままに調査が進められるからです。
質問応答記録書にどんなことを書き、どんな事実を認定しようとしているのか、そんな視点でみてみると、反論すべきことがわかります。