国税不服審判所で重加算税が取り消された事例を紹介します。
平成25年9月26日裁決は、納税者が当該パンフレットの製作費を当該課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めたことについて、隠ぺい又は仮装の行為があったか否かについて争われた事案です。
「決算期末に納品予定だった商品について、代金は支払われたが、納品されていなかった」という事実。どの証拠をもって仮装隠蔽があるといえるのでしょうか?
調査担当者は、①納税者の会計処理が、請求書をもって納品があったものとみなして行われていたことから、パンフレットの納品前に、取引先に対して請求書の発行を依頼したことは、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成に当たる、②当該課税期間内に納品されないこととなったにもかかわらず、あえて課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったことは、帳簿書類の意図的な集計違算に当たることから隠ぺい又は仮装の行為があるとし、重加算税を賦課しました。
請求書とは、納品の事実を示す書類ではありません。
審判所は、①パンフレットの納品時に納品書を受領しており、当該請求書は前払いを求める書類として作成を依頼したもので納品の事実を示す書類として受領したものではないこと、②請求書に虚偽の記載はなく、通謀による虚偽の証ひょう書類の作成があったとはいえないこと、③納品されないこととなったにもかかわらず課税仕入れに係る支払対価の額から除かなかったのは、単に請求人の会計処理を行う部署において納品の事実の確認を怠っていたことによるものであることらの理由から、隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められないと判断しました。
国税通則法第68条第1項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をすることについて、隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い行政上の制裁を科すことによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものです。
「悪質な納税義務違反」と判断されかねない行為が起こらない管理体制も必要であることもご承知おきください。